相続税の延滞税・加算税とは?申告を放置した場合のペナルティ

「相続税の申告期限を過ぎて、相続税申告書を提出したらどうなりますか?」
「ペナルティや追加の税金はあるのでしょうか?」
「相続税申告後の税務調査で、追加の税金が発生した場合、さらにペナルティはありますか?」

これらは、相続税実務をしていると大変よく受ける質問です。

今回のコラムでは、この相続税申告に伴いペナルティとして課税される場合がある、延滞税加算税について、税理士が解説します。

相続税の申告期限は、『相続の開始を知った日の翌日から10か月以内』と定められており、この期限までに申告とともに納税もおこなう必要があります。

これに関し、国税庁ホームページには、「相続税の申告と納税」というタイトルで次のように記載されています。

相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。例えば、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になります。
なお、この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合がありますのでご注意ください。

この中の最後の文中において、「本来の税金のほかに加算税延滞税がかかる場合がありますのでご注意ください。」とあります。

1.相続税を申告期限後に納付した場合に課される「延滞税」

概要

相続税を申告期限までに納めることができず、申告期限後に納付した場合、納付期限の翌日から納付した日までの日数に応じて、利息に相当する金額が延滞税として課税されます。
こちらは、遅れて納付することによる利息のようなもので、下記で説明する加算税とは、性質が異なります。

金額

延滞税の額は、申告期限の翌日から実際の納付日までの期間(納付が遅れた期間)の日数に応じ、未納の税額に年14.6%の割合で課税されます。ただし、納期限までの期間又は納期限の翌日から2か月を経過する日までの期間については、未納の税額に年7.3%の割合で課税されます。

特例

延滞税の割合については、租税特別措置法において、その割合の特例が設けられています。

特例の内容については、次の国税庁ホームページにおいて詳しく解説されています。
国税庁:延滞税の割合

上記国税庁ホームページの内容から、令和2年においては、

  1. 申告期限の翌日から2か月以内の期間・・・年2.6%
  2. 申告期限の翌日から2か月を超える期間・・・年8.9%

の割合に相当する金額が延滞税として課税されることとなります。

例示

申告期限後に
納付した税額
延滞税額
①2か月以内(2ヶ月後)に納付 ②2か月を超えて(半年後に)納付
50万円 約2,100円 約16,900円
100万円 約4,300円 約33,900円
500万円 約21,600円 約169,900円
1000万円 約43,300円 約339,900円

本来は、厳密に日数で按分(61日/366日など)して計算しますが、ここでは便宜上おおまかに月数で按分(2月/12月など)して計算しています。

次に、加算税について解説します。相続税について課税される加算税には、その状況により、【無申告加算税】【過少申告加算税】【重加算税】の3種が存在します。
それぞれについて解説します。

2.相続税を申告期限までに申告していない場合に課される「無申告加算税」

概要

正当な理由なく、相続税の申告を期限までにしなかった場合、無申告加算税が課税されます。
例えば、相続税の申告義務のある人が、申告することなく申告期限を経過し、その後において、申告する必要があることを自分で気づく 又は、税務署より指摘されて気づく場合などが該当します。

金額

  1. 申告期限後に自主的に申告した場合
    ⇒ 納税額の5%(申告期限から1か月以内に納付した場合は課税されません。
  2. 税務調査により申告していないことが判明したため、申告期限後に申告した場合
    ⇒ 納税額の15%(税額が50万円を超える場合、超える部分については20%

例示

申告期限後に
納付した税額
無申告加算税額
①自主的に納付(1か月超) ②税務調査により納付
50万円 25,000円 75,000円
100万円 50,000円 175,000円
500万円 250,000円 975,000円
1000万円 500,000円 1,975,000円

いずれの場合も申告期限後の納付となるため、「1.延滞税」が併せて課税されます。

3.申告した相続税額が不足していた場合に課される「過少申告加算税」

概要

当初行った相続税の申告(期限内申告)における相続税額が不足していた場合、過少申告加算税が課税されます。
こちらは、相続税申告を期限内にきちんと提出したが、その後の税務調査などにより、新たな遺産が見つかり、修正申告をおこなう場合などに、本来の税金に加えて支払う加算税です。
ただし、税務署に指摘される(税務調査)前に自主的に修正申告をおこなった場合には、過少申告加算税は課税されません。

金額

    • 税務調査後に修正申告した場合
      ⇒ 追加納税額の10%(※一定の部分については15%)
    • 税務調査の通知後、実際に税務調査がおこなわれる前に修正申告した場合
      ⇒ 追加納税額の5%(※一定の部分については10%)

一定の部分とは、追加納税額が「当初申告した相続税額」もしくは「50万円」のいずれか多い方の金額を超える場合における、その超える部分の金額をいいます。

例示

(1)当初申告税額が30万円の場合(※50万円を超える部分が一定の部分となる。)

追加納付した税額 過少申告加算税額
①税務調査後に納付 ②税務調査前に納付
50万円 50,000円 25,000円
100万円 125,000円 75,000円

いずれの場合も、追加納付額については申告期限後の納付となるため、「1.延滞税」が併せて課税されます。

(2) 当初申告税額が70万円の場合(※70万円を超える部分が一定の部分となる。)

追加納付した税額 過少申告加算税額
①税務調査後に納付 ②税務調査前に納付
50万円 50,000円 25,000円
100万円 115,000円 65,000円

いずれの場合も、追加納付額については申告期限後の納付となるため、「1.延滞税」が併せて課税されます。

4.相続財産を悪質に隠ぺいした場合に課される「重加算税」

概要

前提となる場面は、「2.無申告加算税」「3.過少申告加算税」と同じですが、その「無申告となった理由」「過少申告となった理由」が、故意に相続財産を隠ぺいした場合など特に悪質と認められる場合に、文字通り重く(高い税率で)重加算税が課税されます。ほとんどの場合が税務調査により「悪質」と認定されることによりますので、税務調査前に自主的に申告した場合や、正当な理由があると認められた場合などは、重加算税の課税を免れることもあります。

金額

      1. 「2.無申告加算税」に代わる重加算税の場合・・・40%
      2. 「3.過少申告加算税」に代わる重加算税の場合・・・35%

例示

隠ぺい(悪質)と認定された税額 重加算税額
①無申告の場合 ②修正申告の場合
50万円 200,000円 175,000円
100万円 400,000円 350,000円
500万円 2,000,000円 1,750,000円
1000万円 4,000,000円 3,500,000円

いずれの場合も、「1.延滞税」が併せて課税されます。

5.具体事例(ケーススタディ)

(1)「無申告加算税」が課税されてしまった事例

令和2年12月1日に被相続人 相続太郎さんが亡くなりました。 相続人は、妻のAさんと長男のBさんの二人です。
相続人の二人は、我が家は遺産がそんなに多くないので、相続税申告は必要ないと思っていました。
それから2年ほどが経過したある日、突然税務署より連絡がきました。

よくよく話を聞いてみると、基礎控除の4,200万円を超える遺産があり相続税申告が必要であったことが判明しました。
この場合に、課税される本来の税金、無申告加算税はいくらくらいになるのでしょうか。

本来の申告期限 令和3年10月1日
相続税申告書を提出した日 令和5年4月1日(申告期限から1年半後)
遺産の総額 6,000万円
本来払うべき相続税額 900,000円
無申告加算税 155,000円
延滞税 110,700円

結局、相続人のAさんとBさんは、本来支払うべき相続税 900,000円に加えて、無申告加算税 155,000円延滞税110,700円を支払うことになってしまいました。
ただし、故意に遺産を隠して申告しなかった訳ではないため、重加算税は課税されませんでした。

(2)「過少申告加算税」が課税されてしまった事例

令和2年12月1日に被相続人 相続一男さんが亡くなりました。
相続人は、長男のAさんと長女のBさんの二人です。
相続人の二人は、次のとおり相続税の申告と納付を申告期限の令和3年8月1日までに済ませました。

申告内容

  • 遺産の総額 5,000万円
  • 基礎控除額 4,200万円
  • 課税遺産額 5,000万円-4,200万円=800万円
  • 相続税額 A:40万円/B:40万円

それから2年ほどが経過したある日、突然税務署より連絡がきました。
そして、一男さんの遺産として計上しなければならない生前贈与が1,000万円あったことが税務調査により判明しました。
この場合に、追加納付する相続税、過少申告加算税はいくらくらいになるのでしょうか。

本来の申告期限 令和3年10月1日
修正申告書を提出した日 令和5年4月1日(申告期限から1年半後)
追加計上する遺産額 1,000万円
追加納付する相続税額 1,000,000円
過少申告加算税 110,000円
延滞税 123,000円

結局相続人のAさんとBさんは、追加納付する相続税 1,000,000円に加えて、過少申告加算税110,000円延滞税123,000円を支払うことになってしまいました。
ただし、故意に遺産を隠していたとは認定されなかったため、重加算税は課税されませんでした。

(3)「重加算税」が課税されてしまった事例

令和2年12月1日に被相続人 相続花子さんが亡くなりました。
相続人は、長男のAさん次男のBさんと長女のCさんの三人です。
花子さんの主な遺産は、自宅と預貯金で、合計で基礎控除の4,800万円以下であると見込まれたため、相続税申告は必要ないと思っていました。
それから2年ほどが経過したある日、突然税務署より連絡がきました。

そして、税務調査となり、その中で、花子さんが亡くなる直前に、花子さんの預金口座から多額の現金が引き出され、相続人三人の金庫や預金口座に保管されていたことが判明し、悪質な財産隠し(隠ぺい)と判断されてしまいました。
この場合に、課税される本来の税金、重加算税はいくらくらいになるのでしょうか。

本来の申告期限 令和3年10月1日
相続税申告書を提出した日 令和5年4月1日(申告期限から1年半後)
相続人が当初認識していた遺産の総額 4,300万円
隠ぺいしたとみなされた遺産の総額 5,000万円
本来払うべき相続税額 5,250,000円
重加算税(無申告加算税に代えて課税) 2,100,000円
延滞税 645,700円

結局、相続人のAさん、Bさん、Cさんは、本来支払うべき相続税5,250,000円に加えて、無申告加算税に代えて重加算税が2,100,000円延滞税645,700円を支払うことになってしまいました。

6.Q&A

Q1:うっかり相続税申告の準備が遅れてしまい、残念ながら申告期限にギリギリ間に合いそうもありません。申告期限から3週間ほどの遅れでの提出となってしまいそうなのですが、この場合でも「無申告加算税」と「延滞税」が課せられてしまいますか?

A1:「無申告加算税」は、申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告をした場合には課せられませんので、ご安心ください。ご相談の事例では、申告期限から実際の納付日までの期間に応じた「延滞税」のみが課せられることとなりますが、3週間ほどであれば、それほど高額な延滞税とはならないでしょう。

Q2:長く音信不通になっていた父が亡くなっていたことを、亡くなってから半年ほど経ったころに送られてきた弁護士からの通知で初めて知りました。間もなく亡くなった日から10か月を経過してしまうのですが、この場合でも申告期限に間に合わなかったこととなり、延滞税などの対象となってしまうのでしようか?

A2:相続税の申告期限は正式には、『相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内』と定められていますので、ご相談の事例では、弁護士からの通知を受け取った日が、お父様が亡くなったことを知った日であると考えられます。そのため、その通知を受け取った日から10か月以内が期限内申告書の提出期限となり、この期限内に提出することができれば、延滞税等の対象とはなりませんので、ご安心ください。

Q3:新型コロナウイルスの蔓延とそれに伴うたび重なる緊急事態宣言の発令のため、必要書類の取り寄せや相続人での話し合い、税理士への相談などの相続税申告の準備が思うようにできず、申告期限に間に合いそうもありません。どうすればいいでしょうか?

A3:相続税の申告書を申告期限までに提出できないことの理由が、「新型コロナウイルス感染症の影響」である場合『災害による申告、納付等の期限延長申請書』を税務署に適正に提出することにより、申告期限の延長が認められます。ご相談の事例では、まず間違いなく期限延長が認められるものと思われますが、申請書の書き方や提出のタイミングなどの確認が必要となるため、税理士に相談して提出されることをお勧めします。

新型コロナウイルス感染症の影響による申告期限の延長については、こちらを参照
⇒コラム「相続税の期限は延長できる?新型コロナの影響による特例を税理士が解説

7.相続税から逃げられるのか? 相続税の時効について

相続税の申告納税義務の時効(正式には除斥期間といいます。)は申告期限から原則5年です。相続税の申告期限は冒頭で述べたとおり『相続の開始を知った日の翌日から10か月以内』ですので、原則として亡くなった日から5年10か月が経過すると相続税の申告も納付もしなくて良いことになります。ただし、相続税を申告する必要があることを知っていて故意に申告していなかった場合は、悪質とみなされ、相続税の申告納税義務の時効は申告期限から7年となります。この場合でも、亡くなった日から7年10か月の間、税務署から指摘されなければ納税義務が消滅することとなりますが、それまでの期間、絶対に税務調査が入らないという保証はどこにもありません。

8.まとめ

これまで、相続税の申告期限後の納付について、延滞税と加算税を中心に解説しました。
そもそも、相続税は遺産総額が基礎控除額を超える場合に申告義務が発生します。

この基礎控除額と相続税申告の必要性については、弊所ホームページ内の『相続税申告が必要な人とは』で解説していますので、ご覧ください。

「遺産総額が基礎控除額以下だから申告不要だ。」と安心するためには、大前提として、遺産総額をある程度、正しく見積もることが要求されます。
預貯金や現金など、ほぼそのままが評価額となる財産もありますが、不動産(特に土地)、有価証券、生命保険金など、専門知識を駆使して評価しないと、正しい評価額が見えづらい財産も多く存在します。
仮にご自身の考えで、申告の必要がないと判断していた場合に、その後の税務調査で実は申告が必要だったとなれば、「無申告加算税」や「延滞税」といった、申告期限内に申告していれば払う必要のなかった税額を、余計に払うことになってしまいます。

相続税の申告の必要があるかどうか、少しでも不安のある場合は、専門家である税理士に相談されることをお勧めします。
弊所では無料相談を実施しております。ちょっとしたご質問、ご相談でも構いませんので、心配ごとがあるようでしたら、ぜひ一度お電話ください。

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監修者

税理士法人根本税理士事務所里 孝(さと たかし)
資格の大原税理士講座にて16年間、相続税法・所得税法の教壇に立ち多数の合格者を輩出した資産税(相続税・所得税)のスペシャリスト。
税法用語に精通している強みを生かした「税務署担当者の腑に落ちる(納得する)相続税申告書の作成」がモットー。税務調査の立会経験も豊富。

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