遺産の分割
ここでは、相続人が確定し、相続財産が確定した後の「遺産の分け方」について解説したいと思います。
被相続人(お亡くなりの方)の「遺言書」がある場合とない場合で手続きが異なります。
また、遺言書がある場合でも「直筆遺言(手書き)」か「公正証書遺言」で手続きが異なります。
遺言書がない場合(遺産分割協議)
遺言書がない場合は、誰がどの財産をもらうか相続人全員で「遺産分割協議」をしなければなりません。
この時に1人でもその内容に納得がいかない相続人がいる場合は、いつまでも分割が確定しないことになります。
相続税の申告が必要な方は、相続税の減額になる「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」は、遺産分割が確定しないと適用を受けることができませんので、お亡くなり日から10カ月以内の相続税の申告期限までには遺産分割の内容を整える必要があります。
また、相続税は誰がどの財産をもらうかにより、その相続税に変動がある場合がありますので、相続税申告が必要な方は、捺印前に税理士にチェックしてもらう方がよろしいかと思います。
遺産分割の内容が決定したら、「遺産分割協議書」を作成して、相続人全員で署名・捺印をします。
遺産分割協議書の作成のポイント
- 相続税の申告期限の10カ月以内には整える。
- 不動産はなるべく共有にしない。(不動産の共有はトラブルの原因になります。)
- 2次相続までを考えて検討する。
遺産分割の種類
現物分割
現物分割とは、この不動産は相続人Aさん、この預貯金は相続人Bさんと現物を分配する方法です。
シンプルな分け方になるので、この方法が良く採用されています。
代償分割
代償分割とは、例えば土地が1つしかなく、相続人が長男・次男の2人の場合に土地を長男が相続する代わりに、長男から次男に代償金(代わりの金銭)を支払うやり方です。
換価分割
換価分割とは、財産を未分割のまま処分して、その売却代金を相続人でわけるやり方です。
例えば、土地を売却してその売却代金から諸経費を差引、残額を相続人で分配します。
※2次相続まで視野にしれた相続税シミュレーション
第1次相続 | 母すべて相続 | 2,000万円分の財産を子供に、 残りはすべて母が相続 |
差額 |
---|---|---|---|
遺産総額 | 100,000,000 | 100,000,000 | |
基礎控除 | -42,000,000 | -42,000,000 | |
小規模宅地等の減額 | -10,000,000 | -10,000,000 | |
税引き前課税財産 | 48,000,000 | 48,000,000 | |
相続税額 | 6,200,000 | 6,200,000 | |
配偶者の税額軽減 | -6,200,000 | -4,960,000 | |
差引納税額 | 0 | 1,240,000 | -1,240,000 |
第2次相続 | 母すべて相続 | 2,000万円分の財産を子供に、 残りはすべて母が相続 |
差額 |
---|---|---|---|
遺産総額 | 100,000,000 | 80,000,000 | |
お母様の財産 | 5,000,000 | 5,000,000 | |
基礎控除 | -36,000,000 | -42,000,000 | |
小規模宅地等の減額 | 0 | 0 | |
税引き前課税財産 | 69,000,000 | 43,000,000 | |
相続税額 | 13,700,000 | 6,600,000 | |
配偶者の税額軽減 | 0 | 0 | |
差引納税額 | 13,700,000 | 6,600,000 | 7,100,000 |
遺言書がある場合
「公正証書遺言」がある場合には、その遺言書によって遺言執行者(取り仕切る人)が「不動産の名義変更」などをスムーズに行うことができるため、特に遺産の分割についての手続きは不要です。
「直筆遺言」の場合には、その遺言について「家庭裁判所の検認」を受けなければなりません。
「検認」とは、相続人にその遺言の内容を知らせると共にその存在を明らかにするものです。
ですからその遺言書に封がしてある場合は、勝手に開けずに家庭裁判所で相続人が立会いの上、開封しなければなりません。
また、「検認」を受けたからと言ってその遺言が必ず有効になる訳ではありません。
検認とはあくまでその遺言の存在を明らかするもので、日付がないもの、ワープロ書きのもの、印鑑がないものは無効になる場合があります。
遺留分について
遺留分とは、相続人に最低限保証されている権利になります。
具体的には、法定相続分の半分になりますが、上記遺言によって、他の相続人の遺留分を侵害してしまっている場合は、その相続人より遺留分を請求される可能性があります。
例えば、相続人が長男、次男2人いて長男にすべての財産を渡す遺言がある場合には、次男は法定相続分の1/2の更に半分の1/4について、長男に請求できる権利があります。