生前対策

地主の相続税対策まとめ。正しい順序・相続の注意点を税理士が解説

地主さんと相続は、切っても切れない関係です。

ここで、一般的に「地主さん」と呼ばれる人はどのような人を言うのでしょうか。

「ここから駅までは○○さんの土地よ」「ここの畑は1町あって」など、いわゆる地主さんのイメージはありますが、どれくらいの土地を持っていたら地主さん、などという定義はありません。

しかしながら、相続税を計算する上で土地は、「路線価」×「面積」(倍率地域であれば、「倍率」×「面積」)を基礎として計算しますので、多くの土地(借地権や底地を含む)を所有している人は、それだけ相続税が大きくなる傾向になります。

また、多くの土地を所有しているという事は、その分だけ、どの土地をどの相続人に承継させようか悩みます。

これに賃貸物件の建物は法人で所有しているなど、法人が絡むとよりいっそう複雑化します。

大きく分けて、地主さんが考えなければならないことは2つです。

「相続税の納税」「土地の分け方」です。

結局のところ地主さんの一番の心配ごとは、「先祖代々の土地をどのようにして、次の世代に承継するか。」だと思います。

これを考えるための順序や注意点を税理士が解説します。

もし、急ぎ解決されたいお悩みがございましたら、無料相談をご活用ください。

1.地主さんの相続税シミュレーション

何と言っても最初にやるべきことは、現状の把握をすること、つまり相続税シミュレーションです。
仮に今相続が発生したら、どのくらいの相続税がかかるのかシミュレーションしましょう。
実際に相続税申告をする際の財産評価や各種計算は、とても複雑なものですが、大まかに相続税を計算することは、そんなに大変ではありません。

路線価 × 面積 (倍率地域の場合は、 倍率 × 面積)

こちらが基本的な算式ですので、次のものを準備して計算出来ます。

ご準備頂くもの

固定資産税の課税明細書 その不動産の所在地の市区町村から送られてくる固定資産税の明細で、その土地の面積が記載されています。
路線価図 国税庁の発表している路線価 https://www.rosenka.nta.go.jp/

このシミュレーションをしないで不動産の購入や賃貸住宅の建設などをすることは、病名がわからないのにいきなり手術をするようなものです。
余計な借入金を増やすことになりますので、注意が必要です。

ちなみに当事務所は、このシミュレーションは無料で行っていますので、ぜひご相談くださいね。

2.相続税対策

相続税対策は、ベーシックなものが良いと考えています。
魔法のように相続税額が消えるものはありませんし、すごく節税になるものは、多額の借入金がセットになるはずです。

(1)生命保険の非課税

生命保険金には、相続税の「非課税枠」が用意されています。
保険料を被相続人(お亡くなりの故人)が負担していた生命保険の死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となる一方で、受取人が相続人であれば一定額まで非課税とされるのです。
非課税枠は次の計算式で算出されます。

非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

要件1:被相続人が被保険者であり、契約者(保険料負担者)である生命保険
要件2:保険金の受取人が相続人

今ある現預金で、「一時払い終身保険」で終身保険などに加入すれば、非課税枠の分だけ、相続財産が減少しますので節税になります。
地主か否かにかかわらず、1番最初にやるべき相続税対策です。

(2)生前贈与

1年間で110万円の非課税の枠がある「暦年贈与」で子や孫に現預金を贈与します。
資金に余裕があれば、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」や「教育資金の贈与」なども検討されても良いと思います。

(3)境界測量や借地契約書の整備

所有している土地の中に隣地との境界が不確定なものあれば、生前に境界測量をしましょう。
また、借地権の契約書などで古い書式のものであれば、公正証書などにして整備すると良いと思います。
こちらは、生前対策というよりは、相続人が後々コストをかけてやるべき事を生前にやってしまおうという事です。

いかがでしょうか?
「そんなのすでに知っているよ。」というものが多いと思いますが、基本的な対策こそ地主さんには大切と考えています。
多額の借入をしての賃貸物件の建設やタワーマンションの購入はリスクが伴いますので注意が必要です。
生命保険は、相続税の納税予定額に合わせて多めに入っておくと、後々相続した相続人は納税の面でもたいへん助かります。

3.不要な土地の整理

地主が所有されている複数の不動産には、収益性などの面から優良なものとそうでないものがあるかと思います。
中でも「貸宅地」「貸古家」「古アパート」は、地主さんの3大不良資産と呼ばれるものです。
すべて先祖代々の大切な不動産というお気持ちを抑えて、ご所有されている不動産に優劣をつけて、不良資産については、現金化又は高収益化をすると良いでしょう。
特に「貸宅地」については、半永久的に自由に使えない土地です。
段階的に借地人に買取りを交渉して、現金化してもよろしいかと思います。

ただ、不良資産といっても市街地(特に東京23区)の「貸宅地」については、一定の価値があります、処分に迷われた場合は、当事務所のグループ内の不動産会社で対応が可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。

4.アパート建築(良い場所であれば)

昔からある相続税対策の王道が、借入による賃貸アパート経営です。
地主さんがアパート建築するとなぜ相続税の節税になるのでしょうか。
またどれくらいの額が節税になるのでしょうか。

例えば、相続税評価額が1億円の更地を所有していたとします。
仮に相続人の相続税率が50%だとすると
1億円 × 50% = 5,000万円 の相続税の支払いがあります。

この土地の上に、金融機関から1億円の借入をして、1億円の賃貸アパートを建設したら、相続税はどれくらいになるのでしょうか。

プラスの財産

1億円の土地は、「貸家建付地(アパートの敷地)」となり、約80%の8,000万円の相続税評価額になります。

建物は、固定資産税表額で評価しますので、建築金額の1億円のおよそ60%程度となり、更に借家権割合の30%が控除されますので、次のような計算式になります。
1億円×約60%(固定資産税評価)×70%(貸家評価)4,200万円

したがって、土地と建物を合わせた相続税評価額は、1億2,200万円となります。

マイナスの財産

借入金の1億円は、債務としてプラスの財産から控除できます。

差引

プラスの財産からマイナス財産を差引いた2,200万円が課税財産となります。
相続税率が50%だとすると相続税額は、1,100万円なので、更地の場合の5,000万円と比べて、3,900万円の節税になりました。

ただし、この借入をしての賃貸経営は、空室率というリスクが常に伴います。
賃貸経営は、第1に場所、第2に場所、第3に場所です。
駅からの距離など賃貸経営をしても大丈夫かどうか、慎重な検証が必要です。

5.タワーマンションの購入よる節税(良い物件であれば)

タワーマンションの購入も地主さんの相続税対策になります。
いわゆる「タワマン節税」です。
なぜ、タワーマンションを購入すると相続税対策になるのでしょうか。
タワーマンションの敷地の土地の相続税評価額も基本的には、路線価で計算されます。
ただし、タワーマンションは縦に長い分だけ区分所有者もたくさんいますので、1人あたりの土地の持ち分はとても少なくなり、20㎡未満となることもあります。
さらに同じ広さの部屋であれば、1階の部屋でも30階の部屋でも相続税評価額は同じになります。
(路線価 × 面積 × 敷地の持ち分で計算するので)
ですので、タワーマンション特有の、「階数が高いほど値段(相続税評価額)も上がる。」ということはありません。
市場価格1億円のタワーマンションでも相続税評価額にすると1,500万円程度ということも良くあります。

ただし、アベノミクス以降タワーマンションの価格が上がり続けていて、令和3年現在の水準はとても高いです。
実行するには、値崩れしない優良物件を選ぶ必要があります。

6.遺言書の作成

地主さんにとって、遺言書の作成はとても頭を悩ませる作業です。
冒頭で記載した「土地の分け方」を決定しないといけません。
しかも1筆の土地に自宅と長男宅の両方が建築されているなど、筆と複数の利用状況が混ざっていると、ケーキを切るようにうまく分けられない場合があります。
さらに土地を分けるということは、その時点である程度将来の相続税額が確定してしまいます。
相続税額のことを意識しないことにより、以下に記載する「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額軽減」「地積規模の大きな宅地」などの税務上の優遇が受けられなくなってしまうことがありますので、事前に税理士と相談し、共同で作成することをおすすめします。

(1)小規模宅地等の特例

次の 7 で詳しく説明します。

(2)配偶者の税額軽減

配偶者が自分の法定相続分の範囲で相続する場合には、相続税がかからないという制度。

(3)地積規模の大きな宅地

面積が大きな土地については、相続税評価額を計算する上で減額になる制度。
取得する相続人ごとの単位で適用されるため、大きな土地を分けて相続することで、この減額が受けられなくなってしまうこともあります。

7.小規模宅地等の特例

みなさんは、ご自宅や事業用地についても相続税の計算上高く評価されて、相続税が課税されることはどう思われますでしょうか。
「遺された家族が住むところがなくなる」「遺された家族が事業を継続出来ない」などの悲惨な状態になり兼ねません。
そこで、「小規模宅地等の特例」という制度があります。
これは、相続等により取得した居住用事業用の宅地等のうち、一定の面積までの分については、一定の条件により宅地等の相続税評価額が80%(又は50%)減額できる制度です。
また、この場合の事業用には農業や不動産貸付業も含まれます。

一定の面積とは、基本的には、居住用についは330㎡、事業用については400㎡、貸付事業用については200㎡までをいい、原則として併用はできません。(例えば居住用敷地で330㎡適用した場合は、貸付事業敷地の200㎡には適用できない)

一定の条件とは、細かく記載とするときりがないですが、大まかには、取得した相続人にとって、その宅地等の必要度が高い場合は、適用できるような趣旨になっています。

地主の皆さんは、自宅あり、賃貸アパートあり、農地ありなので、この制度は大切になります。

特に農業の作業場などの事業用敷地と自宅の居住用敷地が一緒にあるような場合には、平成25年度の税制改正により併用して、両方の限度面積まで小規模宅地等の特例が適用できるようになりました。

この場合は、居住用敷地について330㎡まで80%減額ができ、さらに事業用敷地(農作業場)についても400㎡まで80%減額ができます。
(最大で730㎡まで、ダブルで適用できます。)

ただし、この場合には相続人が被相続人の事業を一定期間継続し、宅地等を保有し続けるなどの要件があるので、注意が必要です。

小規模宅地等の特例については、よく税制改正が行われますので、常に要件などに気を付けておく必要があります。

8.不動産の法人化

不動産の法人化とは、個人が所有している賃貸アパートを、ご自身(又は相続人)が出資して設立した法人に売却して、賃貸収入の申告をその法人で行う仕組みです。

今、日本では個人の所得税と住民税を合わせた最高税率は55%と増税傾向にあります。一方で法人税は国際的な観点から減税傾向にあります。
賃貸不動産をお持ちで個人の所得税が高い方は、不動産の法人化は有効です。
一般的には、移転コストの関係で土地は個人所有のままで、建物のみを法人に売却します。
地主の皆さんは、この場合の土地の相続税評価額が気になると思いますが、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出し、地代を土地の固定資産税の3倍程度に設定すれば、自用地評価額の80%(個人の貸家建付地評価とほぼ同じ)の相続税評価額となります。
また、一定の要件を満たせば、小規模宅地等の特例の対象にもなります。

このように、不動産の法人化がうまく節税につながる場合もありますが、建物の売買契約、土地の賃貸借契約、地代の設定、必要書類の税務署への提出など気を付けなければならない事項が多いため、この不動産の法人化による節税も、前述の遺言書の作成と同様に、事前に税理士と相談し、共同で進めることをおすすめします。

9.相続発生後の注意点

相続税の申告期限は、相続が発生した日から10ヶ月以内です。

この間にやるべきことは、3つあります。
ご遺産の分け方を決定すること、相続税申告書を税務署に提出すること、相続税を納税することです。

地主の方のご遺族は、この期間は手続き的にも精神的にもとても慌ただしくなります。
相続税の納税資金が不足している場合は、銀行からの借入や売却対象の不動産の選定などやるべき事はたくさんあります。

精神的、肉体的な忙しさにより、判断ミスを犯しやすいのもこの期間です。

相続人にとっては、多額の遺産を取得するのは、初めての経験であるため、

「すぐに手放すべきではない不動産(優良物件)を売ってしまった。」

「先のことを考えず、とりあえず不動産を共有名義にしてしまった。」

「銀行から高い金利で借りてしまった。」

などは意外とよくある話かもしれません。

また、不動産の売却のタイミングについては、慎重に検討する必要があります。
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」という制度があり、相続税の申告期限から3年以内の売却であれば、相続人の譲渡所得の金額の計算上、支払った相続税額のうち、一定の金額を売却した不動産の取得費に加算でき、納税額(相続人の譲渡所得税)が少なくなります。

10.まとめ

いろいろと記載しましたが、地主の皆さんが1番最初にやるべき事は、冒頭にも申し上げました通り相続税シミュレーションです。
まずは財産の一覧を作成して、相続税シミュレーションから初めましょう!

計算してみると思ったより、相続税がかからないという事もよくあります。
また、相続税の納税についても、低金利の今は土地を担保に借入を行い一括納付して、借入金は数年で返済することも可能です。
これらの相続税の試算に加えて、不動産の立地などを考えて賃貸経営をすれば良いと思います。

地主さんのところには、土地を所有しているというだけで「アパート建てませんか?」などたくさんの営業がきます。

いろいろな選択肢があると、ご家族の意見も分かれてくると思います。
ご家族内で揉めてしまっては、元も子もありません。

最良の選択をして、良い形で次の世代にバトンタッチできると良いと思います。

監修者

税理士法人根本税理士事務所根本 淳一(ねもと じゅんいち)
専門は相続税と不動産税務。
下町エリア独特の細かい土地の評価を得意とする一方、遺産規模10億円をこえる大型案件も実績あり。
不動産オーナー様からの相談実績は年間100件以上。
不動産の売却に係る特例の申告はすべて経験。

「生命保険契約に関する権利」を活用した生前の相続税対策

前回のコラムでは、生命保険金の非課税枠を活用した相続税対策のお話をしました。
今回は生命保険契約に関する権利のお話です。

「生命保険契約に関する権利」とは、聞きなれない言葉ですが、 どのような保険なのでしょうか。相続税の取り扱いはどうなのでしょうか。
また、なぜこれが相続税対策になる場合があるのでしょうか。
解説したいと思います。

 

1.「生命保険契約に関する権利」とは?

生命保険に加入する場合には、「契約者」「保険料を支払う人」「被保険者(その保険の対象になる人)」「受取人」を決定します。

例えば、父が契約者で保険料を支払い、被保険者を父、受取人を配偶者にする保険は、 父が亡くなった時に残された遺族の生活を保障する、よくあるタイプの生命保険になります。

今回のお話は、「被保険者(その保険の対象となる人)」が、「故人以外」の場合です。

例えば、母が「被保険者」、父が保険料を支払っているケースで、父に相続が発生した場合には、「被保険者」である母が亡くなったわけではありませんので、父の相続の時に生命保険金の支払いはありません。

契約者 保険料を支払う人 被保険者 受取人
父(故人)

これが「生命保険契約に関する権利」と呼ばれるものになります。

 

つまり、「生命保険契約に関する権利」とは、故人が保険料を負担していて、かつ、故人が被保険者でないので、保険事故が発生していないものを言います。(契約者が故人か、故人以外かは下記で説明します。)

それでは、父が亡くなった場合に、父が支払っていた保険料の相続税の取り扱いは どのようになるのでしょうか。

生命保険金の支払いがないので、「何もない」ということにはなりません。

父が支払った保険料の貯蓄性(定期預金のようなイメージで)に着目して、この生命保険契約の「解約返戻金の額」が相続財産として相続人に課税されます。

相続税申告においても、この「生命保険契約に関する権利」は、生命保険金の支払いがないので、うっかり申告漏れになりやすい財産になります。

2.「生命保険契約に関する権利」が2次相続対策になることも

この「生命保険契約に関する権利」が、相続税対策になる場合があります。

なぜこれが相続税対策になるのでしょうか?

生命保険の中には、初期の解約返戻金が低額で、後に解約返戻金が上がるものがあります。

経過年数 年齢 払込保険料(累計) 解約返戻金
1 53歳 100万円 0円
2 54歳 200万円 0円
3 55歳 300万円 0円
4 56歳 400万円 0円
5 57歳 500万円 50,000円

この図はイメージです。実際の保険商品については、保険会社にお問合せください。

この故人が支払った「払込保険料」と「解約返戻金」との差額が、結果的に、相続税評価額を引き下げることになる場合があります。

上の図で、加入後5年に父が亡くなった場合には、父の払い込み保険料500万円に対して、解約返戻金の額は5万円になります。

つまり、父の財産が500万円減って、相続財産に加算されるのは5万円ということになります。

また、故人(父)が生存中に保険料を全額支払い、払い済みにすることができる保険もあります。
こうすれば、故人(父)の資金で、母の生命保険契約が出来上がり、受取人を長男などにすることにより、結果的に、母の相続税対策(2次相続対策)になります。

3. 「契約者」により、「みなし相続財産」か「本来の相続財産」になる

生命保険契約は、「契約者」が契約上の権利と義務を有します。

生命保険契約に関する権利は、「保険料を支払う人」は、「故人」 の前提になりますが、「契約者」 が 「故人以外」 又は 「故人」 により、民法上の取り扱いが異なります。

(1)「契約者」 が 「故人以外」 の場合 (契約者 ≠ 保険料負担者)

例えば、母が契約者で、父(故人)が保険料を支払っていた場合は、母は故人が支払った保険料を引き継ぎ、保険契約は継続します。
この場合の「生命保険契約に関する権利」は、「みなし相続財産」となり、遺産分割や遺言なくして、契約者である母が承継することになります。
また、下記図のように受取人を変更することもできます。 相続税では、父の相続(一次相続)の際は、「解約返戻金の額」が母に課税されますが、 母の相続(二次相続)の時は、長男に保険金を残すことができます。

契約者 保険料を支払う人 被保険者 受取人
父(故人)

 

相続発生後

契約者 保険料を支払う人 被保険者 受取人
母(相続で承継) 長男

契約者は母のまま、受取人を長男に変更します。
父が保険料を払い済みにしていた場合は、母は保険料を払うことなく、受取人を長男とする保険になります。

(2)「契約者」 が 「故人」 の場合 (契約者 = 保険料負担者)

契約者が故人である場合の生命保険契約に関する権利は、故人の「本来の財産」となります。
この場合は、遺産分割遺言によって、この保険契約を相続する人を決定することになります。
その後、契約者、受取人を変更することになります。
相続税ではこちらも「解約返戻金の額」が相続人に課税されます。 >

契約者 保険料を支払う人 被保険者 受取人
父(故人) 父(故人)

 

相続発生後
遺産分割や遺言により承継者を確定

契約者 保険料を支払う人 被保険者 受取人
長男

契約者を母に変更します。

まとめ

相続税対策で500万円の非課税のため、「終身保険」に加入する人は、たくさんいると思います。
また、前回解説したように、これが誰でも出来て、最初にやる相続税対策としては非常に有効です。

次のステップとして、すでに終身保険にしている人で、さらに保険に加入する場合には、この「生命保険契約に関する権利」を考えて、保険を検討しても良いと思います。

ただし、生命保険契約に関する権利の有効活用は、相続発生の時期や保険商品が大きな要素をしめるので、過度に節税するというよりは、「こういうものもあったな」程度が良いと思います。
亡くなる日を前提として、保険に入る人はいないので。

加入の際は、保険会社、税理士などとよく相談の上、実行して頂ければと思います。

監修者

税理士法人根本税理士事務所根本 淳一(ねもと じゅんいち)
専門は相続税と不動産税務。
下町エリア独特の細かい土地の評価を得意とする一方、遺産規模10億円をこえる大型案件も実績あり。
不動産オーナー様からの相談実績は年間100件以上。
不動産の売却に係る特例の申告はすべて経験。

生命保険は、相続税対策になる?生前贈与の活用、受取人の課税にも注意!

相続税対策に生命保険が有効だというのは、聞いたことがあるかと思います。

平成27年から相続税の基礎控除が、改正され相続税の課税対象者が大幅に増えました。
今では、10人に1人の割合で相続税申告が必要になります。
相続税申告が身近なものなったので、出来ればかしこく相続税対策をしたいものです。

相続税対策と言えば、不動産投資、孫の養子縁組などいろいろありますが、相続税対策にも順序があります。

生命保険の活用は、誰でも出来て、そして1番最初にやる相続税対策になります。

 

1.なぜ生命保険が相続税対策になるのか?

サラリーマンである夫(故人)が「契約者」として保険料を支払い、自分の万が一のときには、死亡保険金の「受取人」を妻や子とする生命保険契約はよくあるかと思います。

この相続人が受取る生命保険金(年金形式で受けるものも含みます。)は、500万円 × 法定相続人の数という非課税の枠があります。

例えば、相続人が2人の場合は、500万円×2人= 1,000万円の非課税枠があるので、受取保険金1,000万円までは課税されません。
仮に受取保険金が1,500万円の場合は、非課税を超える500万円部分に課税されます。

ですので、預金の500万円を引出して、保険料が500万円の「一時払い終身保険」などに加入するだけで、500万円の相続税対策になります。
多額の現預金を残して相続を迎えるのであれば、この非課税枠を活用しない手はありません。

本来、生命保険金は、故人の遺産ではありません。
しかし、受取人は実質的に経済的な利益を受けるので、受取った生命保険金を相続等で取得したものとみなして、相続税を課税することにしています。
一般に「みなし相続財産」と呼ばれています。
それゆえ、非課税枠の優遇があります。
ちなみに、故人の本来の遺産については、税理士などでは「本来の相続財産」と呼ばれています。

2.相続税対策だけではない、生命保険の3つのメリット!

生命保険のメリットは、相続税対策だけではありません。
他の3つのメリットを紹介します。

(1)相続税の納税資金の準備

相続税は、残された相続人が支払うものです。
しかもご相続から10ヶ月以内の現金一括納付が原則です。
故人の遺産が多い場合は、相続税も膨大な金額になる場合があります。
また、故人がアパート経営など行っていた場合は、その債務(借入金)を相続人が引き継ぐ場合もあります。
それらの資金の準備として、故人の預貯金の他に生命保険金があれば、だいぶ資金的な余裕がうまれます。
必要な保険金の額については、事前に税理士と相続税シミュレーションの上、決定すると良いと思います。

(2)遺産分割対策に効果あり

先ほども記載しましたが、相続人が受取る生命保険金は、民法上、故人の「本来の相続財産」ではありません。
契約により、受取人が指定されていますので、受取人の固有の財産になります。
よって、遺産分割協議の対象にはなりません。(協議せずとも受取人のものになります。)
また、遺留分の計算の基礎にも含まれません。
よって、生活の心配がある子供など、特定の相続人に保険金を残したいときに、有効にです。
または、例えば遺産が自宅しかない場合は、自宅を長男に保険金を次男に平等に相続させることによって相続争いを防ぐことができます。

(3)相続放棄をした場合でも受け取れる

故人がプラスの財産よりも、借入金などのマイナスの財産が多い場合には、相続の放棄が可能です。
相続放棄すると、マイナスの財産を引き継がない代わりに、プラスの財産も引き継げません。
ただし、生命保険金については、故人の遺産ではないので、相続放棄をしても受け取ることができます。
「自分は借入金が多いので、子供は相続放棄するかもしれない。でもある程度のお金は残して あげたい。」などの場合には有効です。

3.生命保険の課税関係

今まで解説した生命保険は、「保険料の負担者(支払いをした人)「被保険者」が故人の場合のよくある生命保険のパターンを前提としていました。

ただし、生命保険の「保険料負担者」、「被保険者」、「受取人」を誰にするかによって、相続発生時に課税される税金の種類が変わるので、注意が必要です。

それでは、「保険金の受取人が保険料を負担した場合」、又は「故人、受取人以外の第3者が保険料を負担した場合」は、どのような課税関係になるのか補足したいと思います。

この関係をまとめると次のようになります。 (人間関係は 例 です。)

被保険者 保険料負担者 受取人 課税関係
父(故人) 長男 長男に相続税
父(故人) 長男 長男 長男に所得税
父(故人) 長男 長男に贈与税

表を見て頂くとわかると思いますが、「誰が保険料を負担したか」によって課税関係が変わります。

◇故人が、自分を被保険者として保険料を支払い、万が一の時には、受取人を遺族とする保険は、 遺族に相続税が課税されます。
☆先ほど説明した相続税対策(非課税枠が使える)になる保険で、よくある生命保険契約だと思います。

◇「遺族(上の表では長男)」が保険料を支払い、被保険者である父の死亡によって、長男が支払いを受ける生命保険金は、長男に所得税が課税されます。
*長男が自ら保険料を負担し、故人の死亡によって、自ら保険金を取得したので、長男に所得税が課税されます。 故人が保険料を負担していないので、相続税は関係ありません。
また、この場合の長男が支払う保険料に必要な現金を、父から長男に「暦年贈与(生前贈与)」するという応用的な方法もあります。

◇「ある遺族(上の表では母)」が保険料を支払い、被保険者である父の死亡によって、「別の遺族(上の表では、長男)」が支払いを受ける生命保険金は、長男に贈与税が課税されます。
*受取人である長男は、保険料負担者の母から保険金を贈与されたことになり、贈与税が課税されます。
故人が保険料を負担していないので、相続税は関係ありません。

まとめ

生命保険は、500万円の非課税枠の活用のみでなく、相続が発生した場合は、納税資金の確保や遺産分割対策、遺族のその後の生活資金にとても有効です。

シンプルな言い方をすると、保険金を受け取って、「助かった」と思わない遺族はいません。

ご自身の家族構成や状況に応じて、最適な保険を選んで頂き、なおかつ、それが相続税対策にもなっていれば良いと思います。

相続税対策というと不動産投資などからいきなり始める方もいるとは思いますが、まずは生命保険から足元を固めて頂き、有効な相続税対策を実現して頂ければと思います。

監修者

税理士法人根本税理士事務所根本 淳一(ねもと じゅんいち)
専門は相続税と不動産税務。
下町エリア独特の細かい土地の評価を得意とする一方、遺産規模10億円をこえる大型案件も実績あり。
不動産オーナー様からの相談実績は年間100件以上。
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