遺産分割のやり直しはいつまで可能ですか?

Q:遺産分割のやり直しはいつまで可能ですか?
父が死亡して、相続人は姉である私と妹の2人です。
当初、あまり深く考えずに、実家も含めたすべての遺産を2分の1ずつ相続するものとして遺産分割を行い、相続税申告をしましたが、よくよく検討してみると、実家は父と同居していた妹が相続し、現預金は私が相続した方が合理的だと思いました。
この場合、遺産分割を再度行い、改めてその内容に基づいた相続税申告を行うことができるのでしょうか?
ケースによっては、贈与税がかかってしまうことがあると聞き、心配しています。
なお、まだ相続税の申告期限内で、納税はしていません。
A:今回のケースでは、申告期限内の再申告(訂正申告)を前提として、遺産分割協議のやり直しは可能と考えます。
ただし、遺産分割のやり直しについては、様々な私見がありますので、その内容や状況を踏まえて専門家と相談しながら慎重に進める必要があると思われます。
解説:「遺産分割のやり直し」についての課税関係は、相続税法基本通達19の2-8に定められています。
これによると、1度遺産分割で確定した財産を、「遺産分割のやり直し」により再分配した場合には、相続による分配とはならない、とされています。
この考え方は、もっともで、1度遺産分割で確定させた財産に基づいて相続税申告と納税を行った後に、任意の再分配(遺産分割のやり直し)を認めてしまうと、この再分配に伴う相続税額の異動を認めてしまう事になり、明らかに不適当です。
それでは、この再分配での異動があった場合には、相続税でなく、どのような税金が課される可能性があるのかが問題となります。
平成17年12月15日の裁決では、このような異動は「贈与」と認めるのが相当であるとしています。
このように税務当局は、「遺産分割のやり直し」がなされれば、基本的に贈与税の課税対象になると考えています。
しかしながら、今回の事例はまだ相続税の申告期限内であるため、新たな遺産分割協議を成立させ、申告期限内に相続税の申告(期限内申告書の出し直し)と納税を行うことが可能であると考えます。
なお、仮に、当初申告に係る納税を行ってしまっている場合も、不足額がある相続人が、その不足分を追加で納税することにより、後日、過大額がある相続人に対して、その過大分が還付されるものと思われます。
参考
相続税法基本通達19の2-8(分割の意義)
法第19条の2第2項に規定する「分割」とは、相続開始後において相続又は包括遺贈により取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい、その分割の方法が現物分割、代償分割若しくは換価分割であるか、またその分割の手続が協議、調停若しくは審判による分割であるかを問わないのであるから留意する。
ただし、当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。
(昭47直資2-130追加、昭50直資2-257、平6課資2-114改正)
平成17年12月15日裁決の概要
〔裁決の要旨〕
請求人は、養親である祖父亡Gの後妻亡Hと養親子関係がないことを知らないで行った本件遺産分割は、法律行為の要素に錯誤があり、養親子関係がないことを知っていれば亡Hに亡Gの遺産を相続させる本件遺産分割を行うはずはなかったとして、本件遺産分割協議が錯誤により無効である旨主張する。
しかしながら、請求人と亡Hとの間に養親子関係があったとしても、請求人が主張するように、請求人が本件土地建物を亡Hから相続により取得することになるとは限らず、また、請求人が亡Hとの間に養親子関係がないことを知っていたとしても、請求人が主張するような遺産分割協議が成立するという必然性も認められない。そうすると、請求人の主張する「錯誤」は、遺産分割協議の動機に関するものであり、この動機が遺産分割協議の際に表示されていたとしても、本件遺産分割の内容と異なる内容の遺産分割協議がされたということにもならないから、民法第95条に規定する法律行為の要素の錯誤ということはできず、結局、請求人の思い違いないし勘違いにすぎないというほかはない。
したがって、本件遺産分割に要素の錯誤があったとは認めることはできないから、本件土地建物は、請求人が亡Hの相続人から贈与により取得したものと認めるのが相当である。








