相続登記費用の確定申告での取り扱い

Q:相続登記費用の確定申告での取り扱いについて質問です。
父が死亡したため、父が経営していた賃貸アパートAと父が居住していた実家Bを長男である私が相続しました。
不動産の相続登記をした後、賃貸アパートAは、私が引き続き賃貸経営をしています。
実家Bについては、私自身の持ち家があるため売却しました。
相続の登記の際に登記費用を100万円(賃貸アパートAは60万円、実家Bは40万円)を司法書士に支払いましたが、それぞれの確定申告での税務的な取り扱いはどのようになるのでしょうか?
相続登記費用とは、司法書士報酬と登録免許税の合計を言います。

A:相続登記費用の確定申告での取り扱いについて回答します。
賃貸アパートAの相続登記費用の60万円は、「不動産所得の必要経費」となります。
売却した実家Bに係る相続登記費用の40万円は、譲渡所得の計算上、「取得費」を構成します。
ただし、譲渡所得の計算で概算取得費を使う場合は、その概算取得費に相続登記費用を加算することはできません。

解説:それぞれ次の通りの取り扱いとなります。

1:不動産所得の必要経費となる相続登記費用

不動産所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。

不動産所得の金額の計算式

総収入金額-必要経費=不動産所得の金額

総収入金額は、賃料収入のことです。
そして、必要経費となるものは、その賃料収入を得るために直接要した費用の額、一般管理費その他不動産所得を生ずべき業務について生じた費用の額とされています。
したがって、相続登記に係る登録免許税や登記費用は、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用とはいえず(賃料収入と直接的な関係がないので)、必要経費に算入できないというのが基本的な考え方です。
しかし、所得税基本通達37-5において、「業務の用に供される資産に係る固定資産税等の必要経費算入」についての取り扱いが定められており、相続登記費用は資産の取得価額に算入されるものを除き、不動産所得の必要経費に算入する取扱いになっています。
この場合の「業務の用に供される資産」には、相続、遺贈又は贈与により取得した資産を含むこととされているため、不動産所得の必要経費に算入することができるのです。

所得税基本通達37-5(一部加工)

業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用をを含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く)、不動産取得税等は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

  1. 上記の業務の用に供される資産には、相続、遺贈又は贈与により取得した資産を含むものとする。
  2. その資産の取得価額に算入される登録免許税については、49-3参照

ちなみにこの不動産所得の必要経費とする取扱いは、平成17年1月1日以後の相続からで、それ以前は必要経費とはできず家事費(なんの経費にもならない)という取り扱いでした。

2:取得費とされる相続登記費用

譲渡所得とは、土地、建物、株式などの資産の譲渡によって生じる所得です。

譲渡所得の金額の計算式

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=譲渡所得金額

売買代金から購入代金(取得費)と仲介手数料等を差し引いたものが譲渡所得の金額となるようなイメージです。

譲渡した資産(実家B)に係る相続登記費用は、「取得費」を構成することになります。

ただし、この取り扱いは、その譲渡した資産について、被相続人(亡き父)の購入代金がわかっている場合に限られます。
この場合の取得費は、「被相続人のその資産の購入代金+相続登記費用」となります。
(今回のケースでは、実家Bの購入金額+相続登記費用40万円の合計額)

よく先祖代々の資産で、その資産の購入代金等が不明な場合も多くあります。

そのような場合は、「概算取得費」と言って、売却代金の5%を取得費として譲渡所得の計算をすることができます。

注意しなければならないのは、この概算取得費を使った場合には、概算取得費に相続登記費用を加算することはできないという事です。

「概算取得費控除」とは、購入金額が不明のため、売却代金の5%を取得費の合計と考えて、簡略的に譲渡所得の計算をする特例のため、その金額にさらに相続登記費用を加算することはできないのです。

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