もめてしまって相続税の申告期限までに遺産分割協議が整わないケース

相続時の状況

平成31年1月15日に山本一郎様(父)がお亡くなりになりました。
相続人は、妻と長男と長女、そして、山本一郎さんには別れた前妻との子供A子さんがいました。

被相続人:山本一郎
相続人:母、長男、長女、A子さん

当然A子さんにも相続する権利があるので、この場合の法定相続分は、母1/2、長男、長女、A子さんは、各1/6です。

主な財産は、父、母、長男で同居していた自宅の土地と建物(時価8,000万円)そして、預金1,000万円です。

A子さんにも1/6(約1,500万円)の権利があります。

長女の方は、家を出て余裕がある暮らしをしていたので、「実家の土地と建物は、お母さんとお兄ちゃんに必要なものだから」と権利を主張しませんでしたが、A子さんは1/6の権利を主張しました。

これはこれで当然の主張なので、母と長男がなんとかお金を工面して、穏便に話合おうとしたところ、少しの話のもつれからA子さんが突然弁護士さんに依頼していまいました。

こうなると、母と長男側の方も自分ですべて対応するのが難しくなります。
結果として、こちら側の弁護士さんに依頼することになりました。

当事務所の経験からしても、このように弁護士をいれた話合いになると相続税の申告期限である相続開始の日から10ヶ月以内に遺産分割をして、相続税申告をすることは、難しくなります。

また、このようなケースになると税理士事務所の立ち位置も難しくなります。
なぜなら、弁護士は各依頼者の利益のために行動しますが、税理士は、あくまで公平な立場で、納税者のサポートをするからです。

当事務所のご提案

このように揉めてしまったケースで、10ヶ月以内(相続税の申告期限まで)に、 相続税申告書が提出できない場合は、いったん「未分割」の状態で相続税申告書を提出し、後日、遺産分割が確定したら、必要に応じ、払い過ぎた税金の還付手続きなどを行わなければいけません。

「未分割による相続税申告」とは、ご遺産を法定相続分通りに取得したものとして、各人が相続税申告を行うことを言います。

「未分割」で相続税申告をするとどのような不具合があるのでしょうか。

「未分割」の場合には、税制上優遇されている「配偶者の税額軽減」「小規模宅地等の特例」が適用できません。
その結果、分割されている場合に比べて、過大な相続税を納税することになります。

ただし、このような場合には、当初の相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」というものを相続税申告に添付して税務署に提出します。
そうすることにより、当初の相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が確定した場合には、その後の手続き(「更正の請求」といいます。)により、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」が適用できるようになります。
ちなみに3年以上経過してしまいそうな場合は、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」というものもありますが、こちらは要件が厳しいので、単に協議が長引いているなどの理由では、更なる延長は難しくなります。

顛末

ご提案させて頂いた通り当初の相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して税務署に提出し、いったん多くの相続税を納めて頂きました。

この場合の3年以内とは、当初の相続税の申告期限である令和1年11月15日から3年以内である令和4年11月15日になります。

この間、当事務所はある程度の頻度でお客様と連絡を取り、協議の進捗と日付の管理を行いました。

そして、相当期間が経過した令和4年2月1日、ついに話し合いにより遺産分割が確定しました。
その内容は、実家の土地と建物を含めたすべての遺産を長男が相続する代わりに、長男がA子さんに代償金1,200万円を支払うというものでした。

遺産分割が完了したので、当初の相続税申告書の修正を行います。
同居している長男が実家を相続したので、「小規模宅地等の特例」の適用ができます。
税務署に「更正の請求書」を提出し、相続人全員に当初納めた相続税が還付されました。

このように遺産分割が難航してしまった場合でも、適正な判断や手続きにより、良い結末を迎えることができます。

(注)当事務所の実際の取扱い事例に基づいていますが、文中の名前、日付、金額等はすべて架空のものです。

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