相続税申告「後」の注意点
相続税の申告が完了したら、基本的に業務が終了となります。
ただ、相続税の申告において、小規模宅地の特例の適用を受けている場合は、相続税の「申告期限」まで一定の継続要件がありますので注意が必要です。
また、二次相続についても対策ができるのであれば、その後徐々に生前対策をするもの大切かと思います。
生活の中でいつも相続のことばかりを考えるのはいかがかと思いますが、時間と心の余裕のゆるす範囲で、次の世代により多くの資産を残すことは大切だと思います。
1、今回のご相続「後」の注意点
小規模宅地の特例の継続要件
◇今回の相続で小規模宅地の特例の適用を受けた場合は、その宅地等は「申告期限まで」は売却や 用途変更など出来ない場合があるので注意が必要です。
被相続人の自宅などを相続し、「特定居住用宅地等」として小規模宅地の特例の受けた場合(配偶者が取得した場合を除く)は、同居していた親族であれば、「申告期限」まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その家屋に居住していることが要件となります。
(同居親族でない場合は、居住要件はありません。)
したがって、「申告期限まで」特例の対象となった宅地等を売却など(同居親族であれば引っ越しなども)してはいけません。
被相続人の事業(下記、不動産貸付を除く)用の敷地などを相続し、「特定事業用宅地等」として小規模宅地の特例の適用を受けた場合は、その相続人は、被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その事業を営んでいることが要件となります。
したがって、「申告期限まで」は、その事業を廃業などすることや、特例の対象となった宅地等を売却などしてはいけません。
被相続人の不動産賃貸業(アパート経営など)の敷地などを相続し、「貸付事業用宅地等」として小規模宅地の特例の適用を受けた場合は、その相続人は、被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その貸付事業の用に供していることが要件となります。
したがって、「申告期限まで」は、貸付事業をやめることや、特例の対象となった宅地等を売却などしてはいけません。
お返しした資料について
相続税の申告が完了したら、当事務所から資料1式をお返しします。
お返しした資料には、大切な情報がたくさんあり、後日不動産を売却するときや、仮に税務調査がある場合には使用することがありますので、大切に保管をお願いします。
ちなみに税務調査の対策について、当事務所では、「書面添付制度」というのを実施しており、調査の連絡は基本的に当事務所に連絡あり、まずは当事務所の税理士が所轄税務署で意見を述べ、その際に税務署側の疑問点が解決されない場合は税務調査に移行する流れとなります。
必ず立会いをしますので、ご安心ください。
2、二次相続の対策について
父が亡くなり、相続人が母1人、子供2人の場合など、一次相続では「とりあえず今回は母にほとんど又は全部の財産を相続してもらう」ということも多いと思います。
お母さんの老後の資金の確保や、あまりにも早く子供に多くの財産を移転させるのは不安を感じる方も多いと思いますので、それはそれで正しい考え方だと思います。
ただその中でも二次相続に備えて準備することは、次の世代に多くの資産を残す大切なポイントになります。
相続人が母1人、子供2人の前提で、どのような対策ができるかいくつかご紹介したいと思います。
保険の見直し
一時払いの終身保険などに加入して、生命保険金の非課税枠の確保をしましょう。
不良な不動産の処分
地方の土地など今後活用できそうもない不動産がある場合には、処分を検討してもよろしいかと思います。
特に地方の不動産は、「実勢価格」よりも「相続税評価額」が高くなることも多々あります。
余分な相続税を払うことのないように早めの処分を検討されてもよろしいかと思います。
小規模宅地の特例の検討
ご自宅について、母の相続の際に「特定居住用宅地等」として、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、以下のうちいずれか要件に該当する必要があります。
- (1)母と「同居」している子供がその自宅を相続すること。
- (2)自宅を相続する子供が母と同居していない場合は、相続開始前3年以内に、子供又は子供の配偶者の所有する持ち家に住んでいないこと。
(不動産を所有しているが、賃貸などしている場合は大丈夫です。)
このいずれかの要件に該当する場合は、小規模宅地の特例の適用が受けられますので、自宅を相続する人が母と同居するか又は持ち家がある人であれば、その家を賃貸にだし、ご自身も借家に住むなど工夫できるなら、ぜひ検討して頂ければと思います。
土地の分筆
一次相続で大きめの土地を母が相続した場合は、その土地を子供2人にそれぞれ分けられるように「分筆」をすると効果的です。
分筆する場合は、隣地との境界測量や登記があるため、その費用も100万円程度になることもありますが、その費用も相続発生後では何の経費にもなりませんが、相続開始前であれば、結果として、母の財産が減少するため相続税対策となります。
また分筆の仕方によっては、土地の利用単位が変わるため相続税評価額を下げられることもあります。ただし、あまりにも不合理に分筆した場合は、「不合理分割」として税務署に認められないこともあるので、実行前には必ず不動産に詳しい税理士に相談する必要があります。
ご紹介したほかにも、その人の状況に応じて効果的な相続税対策がある場合もありますので、ぜひお気軽に当事務所にお問い合わせ頂ければと思います。